FX(外国為替証拠金取引)を始めるときに最も重要なのは、どのような通貨ペアを選択するかということなんですか、そのためには世界中の主要通貨について理解しておく必要があります。
まず米ドルについてなんですが、ドルと言えば米ドルのことを指します。ドルは世界中で最も取引量が多い通貨で、全世界の為替取引の約9割が、ドルに絡んでいると言われています。
銀行間の取引市場では、ドルが絡んでいない通貨ペアの取引が極端に少ないので、例えば、オーストラリアドル円の取引をする場合には、オーストラリアドルとドル円の2つの通貨を組み合わせて、オーストラリアドル円の水準を計算することが多いです。
世界中の貿易に関しても、ほとんどの決済はドル円で行われています。また、世界中の中央銀行が外貨準備金を保有する場合にも、ほとんどがドルです。
そういう意味でもドルは世界で最も中心的な割を果たす通貨と言うことができます。このようなドルの動きを基軸通貨と呼んでいます。
そのために、為替市場の注目もアメリカに集まります。要人発言や経済指標、大統領選挙が相場に影響を及ぼすのは、アメリカが中心です。
そういった理由から、外国為替市場の大きなトレンドを生み出しているような材料が、アメリカからたくさん出ています。
次にユーロなんですが、世界の中心であるドルと比べて、唯一代替的な割を果たしているのがユーロです。
ユーロは西ヨーロッパの全域を占める大きな経済圏で使われているので、ドルに次ぐ取引量を持っていて、非常に流動性が高く、取引をする上で安心感が持てます。
アメリカの同時多発テロが起きて以来、経済や貨幣準備のような基軸通貨の役割を、リスク回避するために分散させようという動きが世界中で強まっているために、ドルの代替通貨として中心的な割を果たしている通貨がユーロです。
ドイツの中央銀行のブンデスバンクを中心としたユーロ加盟各国の中央銀行は、インフレに素早く対応することで知られていて、その上に、ユーロに物価安定の期待が強いこともあって、通貨を保有することに安心感があることも、ユーロの価値を高くしています。
経済指標や要人発言は、ユーロ全体のものだけでなく、ヨーロッパ全域で最大の経済大国であるドイツの発言や指標の影響力も強くなってきています。
次に円なんですが、世界でドル、ユーロに続いて3番目の取引シェアを持っています。
円は、長くゼロ金利政策をとっていたこともあって、金利差を狙って外貨建ての債券や外貨預金への投資などが活発になっていて投資資金の面では、円売り外貨買いの傾向が高くなっています。
ただし、貿易に関して言うと、輸出は輸入を上回っているので、ドル売りが出やすくなっています。
投資に関する動きには大きな波があるのに比べて、貿易の面では、さほど急激な変化が起こるということが、産業構造が大きく変化しない限り、ほとんどありませんので、今後も円買い圧力が続くということです。
また、世界経済が活発になってくると日本の輸出にとっても追い風になるため、世界経済の調子が良ければ、それが円買いの材料になります。
日本の中央銀行にあたる日本銀行は、他の先進国の中央銀行と比べて、積極的に為替の市場に介入することで知られていて、急激な円高や円安の局面では、積極的に介入してくると思われます。
次にポンドなんですが、イギリスポンドは円と同程度の取引シェアを持っています。
第二次世界大戦直後には、ドルに並ぶ世界の基軸通貨であったのですが、その後、イギリス経済が停滞するにつれて衰退していきました。とは言うものの、依然として世界で4番目の取引量を持っています。
ポンドの特徴は、値動きが非常に激しいことです。取引の中で、実需の占める割合が非常に少なくて、一時的に、1方向に大きく動きやすい投機的な取引が大半を占めているということが影響しているものと思われます。
世界中の先進国の中で、比較的金利が高いことで知られていて、そのような理由から世界中の資金が集まりやすいという特徴があります。
ポンド危機の時に、ユーロ統合の準備段階であるERM（欧州為替相場メカニズム）からの離脱をせざるをえなくなり、ユーロに参加することはありませんでした。将来的にポンドはユーロに参加するか注目されています。
これらの通貨の他にも、避難通貨としての特徴を持っているスイスフラン、近年、高金利通貨として人気のあるオーストラリアドル、アメリカとのつながりが強いカナダドル、中国経済の発展によって注目が高まっている中国人民元などがあります。
